それに気がついたのは、小学5年の3学期ごろからだろうか?
そして、小学6年生にあがる頃には、のび太の身長がクラスのみんなよりも大きいことに。
「あれ、僕こんなに背が高かったかな?」
背だけではない、体格もがっちりして、少年というよりは・・・・
そう、のび太は成長期に入っているのだ。それも誰よりも早く。
ドラえもんもこの事実には気がついていた。でも気づかないふりをしていました。
その原因はタイムマシンにある。のび太は何度タイムトラベルをしたことだろう。
のび太は小学6年生になったばかり、でも実際には14歳の体を持っているのだ。
気がつけばあのジャイアンよりも背が高くなっている。体格もがっちりしている。
それに今朝、声まで変になっている。
「ドラえもん!僕なんだかおかしいよ」
ドラえもんはここずっと、このことについて考えていた。
そして答えはもう決まっていたのだ。
「別れの時が近いんだ」
でもそれをいつ?どうやってするか困惑していた。
ドラえもんは最初はイヤだった、こんな何もない昔に来るより、
セワシ君たちと未来で暮らしていたかった。
でものび太君と暮らしていくうちに、20世紀の世界で暮らすうちに、
のび太が、みんなが大好きになっていた。
この不便な世界、そして頼りないのび太と、出来ることならこのままずっといたい・・
そう考えるまでになっていた。
今日、のび太は誰にもいじめられなかった。
最近ずっといじめられることも少なくなっていたけど、みんなののび太の見る目が変わっていた。
子供に紛れ込んでいる大人・・・・そんな印象がある。
「ドラえもん、今日、僕誰にもいじめられなかったんだ」
のび太自身思春期の中にいる。自我について考え出す頃だ。
「僕はもう少年じゃなくなったんだね」
「そうだよ・・のび太君はタイムマシンや亜空間で、たくさんの時間を過ごして、
実際には中学生ぐらいになっているはずだ。だから体はどんどん成長しているんだ」
のび太はずっと以前より自分の事について考えるようになっていた。
「お別れなんだ」
やっとドラえもんは言えることが出来た。
「なぜ?成長したから?ずっといればいいじゃないか!!」
「君はもう子供じゃないんだ。僕がいたら君はダメになる。
これからは自分で考え、自分で行動するようになる。
君のほうから僕を必要とはしなくなるんだ。」
「そんなことない!」
「いや、そうしなくちゃいけないんだよ」
今までどうり助けてばかりはいられない、もう保護の時代は終わったのだ。
のび太ももう思春期に入っている。ドラえもんの言わんとしていることは分っていた。
まだ少年の頃なら泣いて拒絶しただろう。でももう少年の時代は終わったのだ。
「また遊びに行ってもいいかな?」
ドラえもんはそうして欲しかった。
でも「ダメだよ、僕が帰ったらタイムマシンは引き揚げるから。
またいつか少年ののび太が遊びに来るだろう。その時は助けてやってよ」
のび太は笑ってうなずいた。
「いいかい、自分の未来は自分で切り開くんだ。そして、君には僕と過ごした沢山の経験がある。
それは君の大切な宝物だよ。勉強よりもなによりも、きっと君の役に立つ。
自分の未来を信じるんだよ」
ドラえもんはそう行って未来へと帰っていた。
「のびちゃんって、いつのまにそんなにたくましくなったのかしら?」
ママの小言も少なくなっていた。ママも成長の早い我が子に戸惑っているのだ。
でもそれは自然の成り行きとして受けとめようとしていた。
少年の時代は去った、ドラえもんと共に。