いつもと同じ町、いつもと同じ空、いつもと同じ顔ぶれ・・・・・・
そして、いつものようにのび太が泣きながら部屋に飛び込んでくる。
「ドラえも〜ん!!」
そしていつものようにドラえもんはそこに居た。
「またジャイアンにいじめられたのかい?」
いつもの日常が過ぎていく・・・・
ドラえもんはいつもの様に、四次元ポケットから未来の道具を出す。
その道具を受け取ったのび太はジャイアンに仕返しをする。
しかし、またいつものようにのび太はその道具を使って、たくさんの人にいたずらをする。
いつもならいたずらをすると因果応報があった。
いたずらをしても大事には至らなかった。
ドラえもんがのび太の家に来た理由を覚えているだろうか?
なにをしても失敗するのび太・・・・そのために子孫であるセワシが
未来を変えるために送ってきたのがドラえもんであった。
ドラえもんにはのび太の手助けのほかにもう一つの大事な役目があった。
未来を変えるというのは大変な事だ。
少しでも方向を間違えると未来は別の方向へ進んでしまう。
しかし、どのような道を通っても最後には正しい道に戻れるように案内するのも
ドラえもんの大事な役目であった。
のび太がいたずらに飽き、家に帰ってくる。
のび太はドラえもんにしかられる。いつものようにしかられる。
しかし、しかっているドラえもんの体はノイズがかかったように時々揺らめく・・・・・
先ほどのび太がいたずらをした人の中に、ドラえもんを作るきっかけとなる人物が居た。
彼の子孫がドラえもんを作った。
しかし、ドラえもんの開発者は未来には生まれてこなかった。
ふつうではあり得ない事だった。
ドラえもんの制御回路には、未来を変えると予測された道具を出せない様に
プログラムされていた。
今までどんなことをしても、未来が変わることが無かったのは、このためであった。
しかし、未来は変わってしまった・・・・・
そう、制御回路が故障していたのである。
いつも自動的に危険な道具をさけていた。
ドラえもんも故障に気がつかなかった。未来に影響は無いと信じて道具を出した。
まだ、未来は修復可能だった。
ドラえもんはまだここにいる。すべてが終わったわけでは無かった。
しかし、誰も気づかない。未来が壊れていくなど誰も想像さえしない。
食事を取り、のび太は布団に、ドラえもんは押入に入って寝た。
それがのび太が見たドラえもんの最後の姿だった・・・・・
朝、のび太が目を覚ますとそこにドラえもんは居なかった。
町中を探したがどこにも居なかった。
のび太は泣きながらドラえもんを探す。・・・・いつしか泣き疲れてのび太は寝てしまう。
机の前でうずくまったまま寝てしまう。
机からセワシが飛び出てきた。
未来は時間の修復作用によって大事には至っていなかった。
「セワシくん、ドラえもんはどこに行ったの?」のび太は聞く
「ドラえもん?なんで知ってるの?」セワシ君はきょとんとしてのび太を見た。
のび太は喜んだ。早くドラえもんに会わせてとセワシ君に飛びかかる。
セワシくんはロボットを連れてきていた。
ドラえもんとは似ても似つかない。
でも、名前はドラえもんだという・・・・・
のび太の目には涙が浮かんでいた。
「僕のせいでドラえもんがこんな姿に・・・」
ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんも驚いた。
ドラえもんの記憶はみんなが持っていた。
あの猫型ロボットのドラえもんは確かに存在していた。
間違いのない事実であった。
しかし、あのドラえもんはもう存在していない。
猫型ロボット「ドラえもん」が無に帰った瞬間が過去に残った。
未来には「猫型ロボット」は存在していなかった。
しかし現在には「猫型ロボット」が実際に存在した。
ドラえもんは未来から来た、しかし、未来にはドラえもんが存在しない。
世界にひずみが生じた・・・・・・・
未来世界が崩壊し始めた。なにもかもが狂ってきた。
セワシくんの顔がくるくると変わる。
時には女性に変わる・・・・・
新しいドラえもんの形もくるくる変わる・・・・・
しかし、あの「ドラえもん」の姿には変わらない・・・・
そして、セワシ君とドラえもんは目の前から消えた。
知っていた未来が無くなった。別の未来に変わった。
幾年月が過ぎ・・・・・・・
のび太は今、薄暗い部屋に居た。
周りにはジャイアン、スネ夫、しずかちゃん、出木杉くんが居る。
のび太たちは大学の研究所に居た。
そこにはあの「ドラえもん」の姿が有った。
出木杉くんの才能のおかげである。
ジャイアンの力のおかげである。
スネ夫の財力のおかげである。
しずかちゃんのやさしさのおかげである。
しかし・・・・一番大事であったのは、のび太とドラえもんの
あの楽しい日々の記憶であった。
あの体型、あの声、ねずみが嫌いなドラえもん・・・・・・
すべてがのび太の記憶から作られた猫型ロボット「ドラえもん」の姿がそこにあった。
みんなでスイッチを入れる。
静かな・・・静かな時間が過ぎる・・・・
「のび太くん・・・・・」
ドラえもんが動いた。あのドラえもんが帰ってきた。
そのとき、研究所の電話が鳴った。
ノビスケの子供が産まれたという。
のび太は一言・・・・・・
「その子の名前はセワシにしよう」
のび太はセワシの誕生祝いにドラえもんをあげた。
歴史は確かに狂った。ドラえもんの開発者はのび太達に変わった。
しかし、未来はこれからも存続する。あの時の未来崩壊が嘘のように
すべてなにも無かったかのように存続していく・・・・・
のび太たちは猫型ロボットの大量生産に成功する。
しかし、耳のある黄色い猫型ロボットではない。
「青いからだに耳のない、ネズミの嫌いな猫型ロボット」である。
みんなに幸せを与えるのは「ドラえもん型ロボット」であるから・・と
セワシ君が小学生になる。
お年玉、お小遣いの少なさに嘆く・・・・・
セワシ君は思いつく・・・・
「過去にいっておじいちゃんにドラえもんを貸そう、そして未来を変えてしまおう。」
そして、あの時あの場所に戻る・・・・・
ちょっと変わってしまった未来から・・・・・・・・
ドラえもんが机から飛び出してきたあの日に・・・・・・